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過ぎる終末

日々の妄想垂れ流し日記

2017/4/26

僕が暮らす寮には自炊ができない(そもそも火を個人が扱うことが許されていないし、各部屋には水道すらない)代わりに、食事が提供されるという素晴らしい制度が存在するのでした。

この食事制度は「食事を摂る2日前までに注文しておかなければならない」「普通に金を取る(432円)」「土日は提供しない」「キャンセル不可」という誰もが羨むようなものでしたが、ただ一つ別にあんまり美味くないという難点があるのでした。

あと、少額とはいえお金をとられているわけですが、その割にはどう考えてもおかずの量が少なく、僕たちは唯一おかわり自由である白御飯をたらふく食べることでそのお腹を満たすという、とても社会人になったとは思えない、苦学生のような食生活を強いられていたのでした。

とはいえ、まだまだ働き始めたばかりの僕たちには金もなく、寮に暮らす多くの人はこの美味くもない食事を頼るほかありません。

僕も平日は極力寮で食事を摂るようにし、少ないお金をなんとかやりくりしていたのです。

 

今日も本来であれば寮の食事でなんとか腹を満たすはずでしたが、どうやら2日前の僕は注文を忘れてしまっていたらしく、食堂に貼られているリストに僕の名前がないことに気が付きました。

こうなってしまっては仕方ないので、近くのスーパーに買い出しにいくことにします。別に1日くらいなら食事を抜いてもいいかなと思ったのですが、以前そうしたところ、夜中にお腹が減りすぎて餓鬼のような思いをするという憂き目にあいましたので、賢い僕はこの経験を生かし、買い出しにいくことに決めたのでした。

スーパーに置かれているお惣菜は、どれも寮の食事より遥かに美味しそうに見えます。実際美味しいのでしょうが、これらのお惣菜をお腹いっぱいになるほどに買ってしまうとかなりの出費になってしまいます。

入院費として3万円奪われたあの日から節約精神に目覚めた僕がそんな真似を許すはずがありません。

仕方なく僕はカップ焼きそばとおにぎりという質素な食事だけ買って帰ったのでした。

 

 寮に戻り、食事の準備にかかります。幸いにも、お湯は使い放題でしたのでカップ麺を買っておけばいつでも食べられるのです。

しかしお湯を捨て、いざ食べようかというところで致命的なミスに気がついてしまったのです。

ヤバイ!箸が入ってねえ!

どうやらレジのおばちゃんが箸を入れてくれていなかったらしく、袋のどこを探しても箸が見つかりません。ここで自前の箸があればよかったのですが、自炊ができないことを知っていた僕は箸なぞ持ってきてはいなかったのです。

しかしこれには参ったな…。僕はもう食べる気満々でしたので、お湯を捨てた後にソースまでかけ終わっていたのです。今からスーパーに戻っていては、帰って来る頃には冷えすぎて食えたものではなくなっているでしょう。

部屋を見渡しますが、箸の代わりになりそうなものなどそうそう見つかりません。途中、鉛筆を見つけましたが、折れてしまった場合のことを考えるととても使おうとは思えませんでした。

仕方がないので、最終手段です。僕はひとつ深呼吸をすると、漢らしくまだ湯気の上る麺を鷲掴みにしました。そしてそのままソースが絡むようにかき混ぜます。

熱いよ!これめっちゃ熱い!手の皮膚がぢんぢんしてきますが混ぜ始めたものはどうしようもありません。結局僕は手を真っ赤にしながらカップ焼きそばを完成させたのでした…。

もちろん食べる時も箸がないので手掴みです。気分はもうストリートチルドレンです。正直まだ熱かったのですが、手の感覚がもう薄れていたので、僕は自分の手を一つの道具として無心で食べ続けたのでした。

買ったものがカップ焼きそばではなく、お惣菜であったなら箸をつけ忘れるようなことはなかったのかもしれません。

たった数百円をケチったばかりにこんなことになってしまうとは…。

働きに来て仕事と関係のないところでこんな目に合うとは思いませんでした。

こんなにサプライズを用意してくれるなんて、どうやら僕は東京とは合わないようです。